増井聰彦。ますいとしひこ。下関市出身。慶應義塾大学法学部卒。不動産鑑定士。
不動産の有効利用を目指し「山口県定期借地借家権推進機構」を設立。
特定非営利活動(NPO)法人山口県定期借地借家権推進機構(略称山口県定借機構)は、2009年9月18日に山口県知事認証、同月29日に登記を完了し、現在活動中です。下関の不動産鑑定士、税理士、弁護士、建築士、不動産業者らが発起人となり、定期借地権・定期借家権の普及を目的に設立しました。
地方都市では中心市街地の空洞化、地価下落などの共通問題を抱えており、これら諸問題の緩和、解決に向けた不動産利用の高度化、流動化を促進する活動の基点になるべく設立した団体です。
設立認可を記念して2009年10月17日に下関市豊前田町の海峡メッセで記念講演会を開き、定借関係のトップリーダーが話をされました。紹介しますと、塩見宙全国定期借地借家権推進機構連合会会長が「振り子は動いた―定期借地借家権について」。小山茂雄近畿定期借地借家権推進機構初代理事長が「今なぜ定借か?」。金子道雄独立行政法人住宅金融支援機構中国支店長が「定期借地と金融」。そして福田郁雄福田財産コンサル社長が「混迷の不動産市場と土地の有効活用」です。
これから定期借地権、定期借家権、土地の有効利用などについて話をしていきますのでよろしくお願い致します。
山口県定借機構の活動について説明する前に、借地借家法の概念で、建物の所有を目的とする地上権または土地賃借権、いわゆる「借地権」について説明したいと思います。
分かりやすく言えば、ある土地に建物を所有するために、他人の土地を借りて使用する権利のことです。その借りている側の貸し手に対する権利を「借地権」(または地上権)といいます。土地を所有していない人でも土地を借りることにより住宅を所有できるという点で、土地を有効利用できる良い方法であったといえます。
しかし、旧借地法の借地権は土地を貸す側にとっては、「一度貸した土地はもう半永久的に戻ってこない」などと言われるように、土地を取り戻すためには高額な立退料が必要なことや建物再建築による契約期間の延長、契約更新後の期間が1回目は20年、2回目以降は10年と定められているなど非常に不利な内容になっていました。
このような状況を変えるため、平成4年に借地法の改正が行われ、現在の借地借家法になりました。この改正により地主が土地を貸しやすい更新のない定期借地権が創設されました。
土地価格が下落する中、所有より利用に重きを置く制度変更はどんどん推進すべきと考えています。
前回は借地権とはという内容でお話しました。今回は定期借地権についての内容をお話市しようと考えていましたが、今はちょうど「ゲゲゲの女房」ブームでもありますので、境港市の定期借地権付き住宅団地の事についてお話します。
先日、機構の会員と私と2人で境港市の定期借地権付き住宅団地「境港・健康シティ 夕日ケ丘」に行ってきました。境港市の土地開発公社の方には大変お世話になりました。
ここでは「定期借地権制度を活用すれば、月額3700円の土地賃料で、75坪のゆとりある土地を51年間利用することができます。手持ち資金が少なくても、夢のマイホームを持つことができます。」という謳い文句で多くの方が土地を借りて住めるように環境を整えています。
近年、土地の価格が全体的には下落の一途をたどり、土地を資産と考えることが難しくなっている状態です。このような中で土地を買うのではなく借りるという考え方が増えてきても不思議ではありません。境港市は自治体が定期借地権を推奨して地方でも結果を出している貴重な例と言えます。
水木しげるロードで成功した境港市、こういう分野でも注目されています。
前回は具体例として境港市の夕日ヶ丘定期借地権付住宅団地のお話をしました。今回は旧借地法と定期借地権との違いを簡単に復習したいと思います。
一番大きな違いは、旧借地法では借地のトラブルの円満解決が困難であったものが定期借地権では解決がスムーズになるという点だと思います。国土交通省のホームページ「マンガで読む定期借地権」でも次のようなことが述べられています。
『所有している土地を他人に貸す際、借地期間満了時に土地が必ず帰ってくるのかなど様々な不安があります。このような不安を解消する手法として、「定期借地権」制度があります。「定期借地権」は貸した土地が必ず帰るとともに、借地期間満了時の立退料の必要もありません。このため、地主は安心して土地を貸すことができ、土地の有効活用が大きく進むことが期待されます。』
いままで定借を推進してきた我々としては心強い感じがします。民間の機関がいくら地主さんに定借の説明をしてもなかなか浸透しなかったですから。国が積極的に定借を安心安全な土地活用として宣伝してくれるのは、定借を広めようと頑張っている者としては有り難いことです。
今回は2010年に行われた中国地区用地対策連絡会山口県支部用地補償研修会の講師の依頼を受け、山口県セミナーパークで「定期借地権制度の紹介」という内容で行った講演についてお話したいと思います。
山口県や県内各市の用地担当者の方々に最近の定借住宅団地の特徴についてお話しました。その団地の共通のコンセプトは、近隣の居住者が共同で使用する私的な共有空間を大切にというものでその共有空間をコモンと呼んでいます。
このコモンは住民の活発な交流を短時間で実現できることが分かってきました。住民がコモンを利用してホームパーティーやお茶会などを開き交流の場としているのです。
こういう場があると、誰かの目がいつも届くので子供たちを外で安心して遊ばせることができます。また、常に人目があるということから、防災や防犯にも役立つことになります。
もちろん、交流の場ができても諍いが起こることはありますが、たいていの場合話し合いで納めてしまうそうです。普段から顔を合わせているからできる事です。
このような、日本人が忘れてしまった交流を取り戻すきっかけにもなる定借事例の報告も機構として積極的に行っていきたいと思います。
今回は全国定期借地借家権推進機構連合会の情報による神社とマンションが一体となった「パークコート神楽坂」の定借事例についてお話しします。
日枝神社、神田明神とともに江戸の三社と呼ばれた赤城神社と一体になってパークコート神楽坂は建築されています。神社の建つ底地に70年の定期借地権を設定し、その上に神社及びマンションを建てることで神社の費用負担を無くし建て替えを行っています。
このマンションの開発に当たっては、赤城神社の近くに居住する著名な建築家が設計監修をし、三井不動産レジデンシャル㈱が事業パートナーを務め、神楽坂文化の発信拠点となるような様々な仕掛けがなされています。
境内の奥に本殿、左手に神楽殿、右手にパークコート神楽坂が建つという配置になっており、境内に面した部分は社務所などとともにカフェや地域貢献ルームとして活用されます。マンションの敷地が神社境内の物件というのは珍しく、粋な企画が人気を集めたものと思われます。70年間の定期借地権終了後は神社の杜に戻す予定とのことです。
今回は神社の敷地で行われた定借マンション事業のお話でした。
新聞報道などによりますと、相続税の改正案として基礎控除を4割圧縮、最高税率を現行の50%から55%に引き上げるとのことです。
基礎控除について現行の制度では、定額部分の5千万円に、法定相続人1人あたり1千万円を加えた金額が遺産額から控除されているものを、改正案では定額部分を3千万円、法定相続人1人あたりの金額を6百万円にまで下げるという案になっており相続税の増税時代がやってくると言われています。
かつては金融機関などよりの借り入れを行いアパートなどの収益物件を建築し相続税評価減を行い、相続税の発生を少なくする方法がオーソドックスな相続対策でしたが、これから社会は人口減少時代を迎え、入居者などの確保が一層厳しくなる時代に突入するかもしれません。
定期借地権などを設定すると相続時の土地の評価額引き下げの効果があります。また、ハイリターンは望めないが貸した土地が戻り地代収入もあります。
所有と利用の分離の時代を迎え、保証金・権利金・一括前払い賃料等の一時金制度を使った定期借地権の活用が今後脚光を帯びてくるのではないかと思います。
より多くの方に定期借地権を知って頂きたいということで、3月2日(水)に下関環境みらい館(下関市リサイクルプラザ・下関市古屋町1丁目18番1号)3階の研修室で講演会を開催することになりました。
内容は、第1部で九州定借機構副理事長の菅原純氏に「九州定借機構から生まれた実例紹介」ということで、福岡県大野城市畑ヶ坂と福岡市西区九大学研都市の2物件の事例を中心に定借実務について、第2部で「平成23年税制改正について」ということで機構の正会員や税理士の先生に税制の変更点などについてお話をして頂きます。
時間は14時30分から17時までで、参加費は無料です。お問い合わせは機構事務局㈱徳海内(電話083・235・1093、FAX083・222・1093)までお願いいたします。
定期借家権の説明にまで至りませんでしたが、それはまた機会があればお話したいと思っています。機構のホームページは、山口県定借機構で検索して下さい。
2か月間有難うございました。これからも山口県定期借地借家権推進機構をよろしくお願いします。